恐怖の泉

実話系・怖い話「少しの変化」

これは私の友人の友人(仮称Aさん)が体験した話です。

Aさんは、就職を機に東京で一人暮らしを始めました。
当時Aさんには彼氏がおらず、彼女の友人も何人か同じく東京で仕事を始めていましたが、自分以外の人に家の鍵を渡すことはなかったそうです。

真面目でキチッとした性格のAさん。
戸締りや電気の消し忘れなどがないよう、よくチェックしてから外出していたそうです。

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そんな彼女は節約のためにきちんと自炊をしていました。
たまに手を抜くこともありましたが、出勤前にお味噌汁を多めに作り、朝ごはんと夜ごはん用にしていたそうです。
卵も彼女の食事には欠かせない食材でした。
常に残数をチェックして、ストックが切れることがないようにしていたそうです。

新社会人の彼女は、朝から晩まで忙しくしていました。
ですが昔からの夢でもあった仕事に就くことが出来たのでやりがいもあり、忙しいながらも楽しんでいました。

そんなAさんからある日、私の友人は相談を受けたそうです。

「なんだか最近、家の中のものが減っているような気がする」
と。

どういうことなのか聞いてみると、朝作ったお味噌汁が仕事から帰ってくると減っているような気がする、とか、卵が一つなくなったような気がする…といったようなものでした。

実家暮らしであまり料理をしていなかった友人は卵の数だとか、味噌汁の量だとか、そんなことをあまり考えたことがありませんでした。
そのため友人は、心配性だなあというくらいにしか考えておらず
「気にしすぎだよ」
と、Aさんの相談に軽く反応してしまったそうです。

Aさんも
「そうかなぁ。まぁ、気のせいかもね」
と、自分に言い聞かせるように言ったそうです。

最近仕事で疲れてるのかもしれないし、休むときはゆっくり休んでとアドバイスをして、その話は終わったそうです。

けれど、その後もAさんの家では小さな変化が起こっていたようです。

何かが少し減ったような気がする。
何かの位置が少し変わったような気がする。
「気がする」という程度の、小さな変化。
だからこそ、Aさんは「変わったような気がする」と思いつつも「気がするだけだ」と自分に言い聞かせていたようです。

そんなある日、友人の元にAさんから連絡が来たそうです。
「お風呂のフタが開いてる」
と。

突然そんな連絡がきたら
「…だから?」
と返してしまいますが、Aさんの場合はそれで終わるわけにいきませんでした。

「フタを閉めて行ったと思ったんだけど、開いてる…。気のせいかな、私の勘違いかな…。」

Aさんは必死に自分へ言い聞かせるように話していましたが、明らかに動揺していました。
以前にも家の中の違和感、物が減っているような気がするという話を聞いていただけに、友人もAさんが少し心配になったそうです。

「面倒くさいかもしれないけれど、念のために部屋とか冷蔵庫とか、ある程度の場所の写真を撮っておいてから出勤したら…?」
とアドバイスしたそうです。
Aさんもこの生活の中での違和感、モヤモヤを解決するにはそうするしかないと思ったそうで、次の日の出勤前に家の中をあちこち携帯のカメラで撮影して回ったそうです。

それから1週間ほど経った頃、友人の元にAさんから連絡が来たそうです。
「私、引っ越すことにしたよ」
と。

何があったのか友人が話を聞くと、携帯のカメラで家の中を撮影して2日後に、出勤前と帰宅後で家の中で明らかに違う箇所があることを知ったからだと言います。
それはお風呂でした。

出勤前の浴室の写真は、お風呂のフタは閉めたまま。
シャンプーやボディソープなどのアメニティ類も定位置にあり、排水溝のフタも掃除した後閉めた。
何気ない、いつもの浴室の風景を写したのですが、帰宅後の風景と見比べてみると明らかにおかしな箇所がありました。

お風呂場の排水溝のフタが写真では閉めてあるのに、帰宅後なぜか開いていました。
それも少しだけ動いているとかではなく、明らかに動かしたというほどに移動していたのです。

一人暮らしを始めたばかりで、あまり貯金もない時期だったそうですが、借金をしてでも一刻も早く引っ越したい!と思うほど気持ち悪い出来事だったと、Aさんは言っていたそうです。
幸い、引越し後は何も起こることはなく、今は結婚して新居で幸せに暮らしているAさん。
新社会人になりたての頃に暮らしていたあの家で、一体何が起きていたのか…。

今でもその家は次の入居人を待っています。
真相は明らかになっていませんが、知るのもなんだか怖い、そんな出来事でした。

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